対照的な2つの公園から学ぶ
2つの公園
東京都、千葉県を分ける江戸川の両岸に2つの大きな公園があります。
一つの公園には、公園内にたくさんの掲示がしてあります。あれをしてはいけません、これをしてはいけません、ここでこれをしないでください、〇〇を捨てないでください、これを守ってくださいなどなどです。こんなに禁止することが多いのかと驚くほどです。
もう一つの公園には、そういう禁止事項の張り紙がほとんどありません。いや無いかもしれません。それほど差があります。
一つめの公園は、葛西臨海公園(都立)であり、駐車場代、水族園を除いて入園は無料。もう一つの公園は、ディズニーランドとディズニーシーからなるディズニーリゾート。こちらは公園ではなく遊園地と言うのが正しいのですが。
東京ディズニーリゾートは、昭和58年に開業 約510,000平方メートル。その6年後の平成元年に東京都江戸川区に都立葛西臨海公園ができました。大きさは約816,000平方メートル(令和7年4月1日現在)とのことです。

注意書きがあるわけ
葛西臨海公園での掲示はまっとうなことです。公園では、不快な思いをしたくありません。書いてあることで守ってくれればよいし、違反があれば注意しやすくなります。
話はそれますが、他の大きな公園、北の丸公園(環境省管理)で、目を引く看板を見つけました。芝生の上に立っている重厚な注意書きは、「運動禁止」です。何があったのでしょう。呼吸運動とか蠕動運動という運動もあるのですが。

なぜ、こんなに立派な「運動禁止」になってしまったのでしょう。
ディズニーリゾート
葛西臨海公園と異なり、ディズニーランドのトイレには鏡と時計がないそうです。
それは、現実世界を思い出させないためで、時計と鏡が「夢」と「現実」を繋ぐものと考えられているからだそうです。
2023年の東京ディズニーリゾートの来場者数は、約2750万7000人 1デイパスポートは、約1万円。

ここは、葛西臨海公園と異なり、ほぼ、注意書きがありません。禁止とも書いてありません。それでも大丈夫なのでしょうか。
葛西海浜公園
葛西臨海公園の2024年度の年間入場者数は約132万人 入場は無料ですが、水族園の入園料は700円。税金が年間 57億円 程度出されているらしいです。
考えたいのは、人間の悪い行動を抑制するにはどうしたらいいかということです。
葛西臨海公園式では、掲示などで注意事項を通知しておけば人間はルールを守るだろうという考えです。お客との間には、やや対立の関係になります。
ところが、人間が迷惑行為を行うのは、不満を感じるときです。そして、人は注意されることを好みません。だめと言われると、かえって悪い行動を起こしがちです。
「反省させると犯罪者になります」という本がありましたが、そういうことです。
葛西臨海公園は、少々不快な思いをさせても事前にルールを掲示し注意を促すという方式。
ディズニーランドは、注意という不快感を与えず、人間はいい心地だと常識的にふるまいやすいということを前提とした方式といえるかもしれません。実際に、徹底した清掃、スタッフの笑顔や優れたエンタメで、心地よい気分にさせてくれます。そういう時は悪いことはしにくいものです。ニューヨークの地下鉄と同じ現象です。

病院はどうあるべきか
私にとって関心があるのは、病院ではどちらの形が望ましいかということです。
総合病院や救急病院は、治療費の未払いなどのトラブルで多いと聞いています。精神科病院よりも深刻なようです。職員の被害を防ぐためや離職を防ぐためにも対応が必要です。そのため、禁止事項の通知は多くなる傾向があります。
当院のような精神科病院でも多種の禁止事項があります。「撮影禁止」、「長いものの持ち込み禁止」、「スマホなどは夜8時にはあずかります」・・・。現状ではやむをえない面もありますが。
一方、人間は禁止されたり、制限されたりすると不愉快になります。人間の尊厳と関係するからです。
精神科病院のことしかわかりませんが、病院は患者とスタッフで協力して治療を作っていく時代です。
入院治療の間、なるべく快適に過ごしていただきたい。禁止事項は少なくして、多く許容していければと思っています。何か起こるのでないかと恐れたくありません。何かあったとしても、そのために全面的に禁止し防衛するのは避けたいです。自宅でできることは病院でもできる。治療だけが異なるというのが理想です。治療者側が不必要な完全主義に陥っていないか検討が必要です。(2025年10月)