当院のコロナクラスター報告(2)

発生数

 1月31日現在までに、患者様40人、職員14人がコロナのPCRで陽性になっています。A病棟という病棟から始まり、B病棟、C病棟で散発しているという状態です。当院は隔離室が少ないために、対策が非常に困難でした。また、患者さん一人当たりの病室面積が少ない古い病棟での感染がすべてです。

 スクリーニング検査をやると無症状の人がかなりひっかかります。どこまでやるかが問題です。当院では、患者さんも職員も繰り返しやっていますが、それがいいかわかりません。

ワクチンの効果

 患者さんはほとんど2回ワクチンをしているのですが、感染するということに関してはまったく無力のようにみえます。

 職員は3回目のワクチンを終えて、2-3週間になりますので、これから職員の罹患が少なくなるかです。

症状 

 発熱の割合は、陽性者の6割くらいです。最高発熱は37.5℃くらいから39.5℃までです。倦怠感が強そうな人もいます。咳も出る人はいますが「ときどき出る」くらいです。無症状の人も4割くらいいます。

 症状は早期に軽快し、発熱は1日か2日間がほとんどです。その後は、暇そうにしている人が多く、食欲はほぼ保たれます。まれに平熱が続いた後、37℃前後の発熱がある人もいました。

 症状としてはインフルエンザより軽く、感染力はインフルエンザより強いです。

検査

 院内のPCR(NEAR法)の試薬が足りなくなり、抗原定性キットをまず行い、外部のPCRも同時に出すということもおこないました。抗原検査では、偽陰性になることも多いです。外部のPCRの結果は当院では、提出から27時間くらいかかっています。

治療

 中和抗体点滴薬ゼビュディを用いた人が5人程度、飲み薬ラゲブリオを用いた人も5人程度いるのですが、みんな早期に回復しますので、差がわかりません。合併症が重篤な人では効果が分かるかもしれません。

 肺炎になった人はいませんが、もともと脆弱な人は心配です。酸素を前から使用していた人がいるのですが、その方はレムデシビルも使っています。

 アセトアミノフェンを解熱のために用いた人もいますが、なくても下がります。

 治療薬の入手や患者さんの署名、家族への連絡など、治療より、治療の周辺問題でてこずります。

 精神症状との関連でみると、倦怠感との関係でしょうか、抗精神病薬や睡眠薬が過剰に効いて倦怠感を助長する、老人では呼吸抑制とみられる症状の出ることもあり、一時的に向精神薬を減量する方がいい場合があります。

感染対策

 膨大な感染防止用具を用いても、フロアのほとんどの患者様が感染してしまっています。精神科の職員の感染対策では、対応できないほどの感染力です。マスクができない、距離が取れない患者さんの特性や病棟の構造上の問題もあり、結果としてはそのフロア内の感染を止めることはできなかったといえます。

 ただ、まったく感染者が出ていない病棟もあり、病棟間の隔離は今のところ有効なように思います。

 感染は、思いがけないところに現れることもあり、ウイルスの侵入経路は複数あると考えられます。街でこれだけ流行っているのだからどうしようもありません。

食事

 食堂でみんなが会して食事というわけにいかず、弁当にしています。栄養課は弁当を詰めるのがたいへんであり、一部は、外部の弁当業者に頼みました。

予後

 現在までの54人で、内科病院に転院した人はいません。また、死亡した人はいません。基準である10日を過ぎても症状が続いた人はいません。

問題点と光

 やはり職員の感染が一番困ります。ほとんど症状がないのに10日間休まないといけないというのは運営上大きな問題を生じさせます。休む本人も悔しいでしょう。

 他の病棟からの援助を受けたりしてやりくりしていましたが、先週1週間は職員の休みが多く大変でした。今週は職員の復帰もすすみ、楽になってきています。

 職員の同時感染の防止が何より重要でしょう。

 書類の記載と保健所への報告、患者さんの署名を得ること、家族への連絡、繰り返しの検査、物品の手配、それと同時に通常の精神科治療も継続すること、かなり大変です。

 「こんなのやってられるか!」といって、仕事を投げ出す人がいてもおかしくないですが、今のところいないようです。また、極限状態だと、人間関係がギスギスするものですが、今のところ、それも目立たず助かっています。みんな冷静に対応していて偉いです。

 当院のホームページの1日の閲覧数が過去最高となっています。ありがとうございます。コロナと一緒だ。

                                  1月31日院長