コロナワクチンは効くか?(医療従事者向け)

はじめに

 コロナのワクチンは、どの程度効いているのだろう。

 さて、この頃、テレビでよく見るのが、下のグラフだ。「直近1週間の人口10万人当たりの都道府県別コロナ感染者数」。NHKのサイトからいただいたものだが、これを見ていると意外な県の感染者が多いような気がする。都会に多いのかと思っていたが、実際には鳥取が一番だ。12月12日の集計。

 次は、これまた重要なデータだが、都道府県ごとの感染者数の累計だ。過去3年間ぐらいの感染者である。こちらもNHKのサイト。12月13日の集計である。これだと人口が多い都会に多いのは当たり前で、人口で割らなければ本当のところはわからない。

下の表、こっちも見てほしい。各都道府県のワクチン接種数だ。第1回目接種数から第5回目接種数まである。12月12日の集計。デジタル庁のものだ。

統計計算の方法

 ワクチンがどれだけ効いているのかを調べる目的で、これらのデータで分析することにした。まず、エクセルに都道府県別データを入れる。都道府県別の人口も入れる。デジタル庁のものは、コピーしてそのままエクセルに入れられた。人口の表もエクセルにずばっと。

 しかし、NHKの2つのデータは、47都道府県、手入力した。

 こうして、以下のように計算してみたのだが、あまりにも驚くべき結果だったので、12月21日のデータでも調べた。結果はほぼ同じです。

結果

人口当たりの累積感染者数とワクチン接種率の関係

 エクセルで作った表をSPSSという統計ソフトに入れてピアソンの相関係数をみてみた。

まず、今までの都道府県の累積感染者数(人口当たり)とワクチン接種率(人口当たり)に関係があるかを調べた。

 まず、ピアソンの相関係数(r)の意味だが、下の表を見てほしい。数字の絶対値が1に近いほど関係が強いということだ。

相関係数r-1 ~ -0.7-0.7 ~ -0.4-0.4 ~ -0.2-0.2 ~ 0.20.2 ~ 0.40.4 ~ 0.70.7 ~ 1
意味強い負の相関負の相関弱い負の相関ほぼ相関なし弱い正の相関正の相関強い正の相関
相関係数の意味

 これで、下の表2行目を見てほしい。12月21日の累積感染率は、第1回目の接種率と相関係数が-0.683の負の相関があるということである。つまり、接種率が高い都道府県ほど累積の感染者数は少ないということである。第3回目接種率、第4回接種率は特に高く、強い負の相関があるワクチンが過去のウイルスには効いているということだ。

第1回目接種率
20221221
第2回目接種率
20221221
第3回目接種率
20221221
第4回目接種率
20221221
第5回目接種率
20221221
感染者数累計
人口当たり
20221222
過去のウイルスr
有意確率
N
-.683**
.000
47
-.690**
.000
47
-.800**
.000
47
-.754**
.000
47
-.639**
.000
47
直近1週間
人口10万当たり
感染者数
20221222
今のウイルスr
有意確率
N
.021
.891
47
.027
.855
47
.194
.190
47
.224
.130
47
.361*
.013
47
ワクチンの効果を示す表  *:有意確率p<0.05  **:有意確率p<0.01

今までのワクチンは、有効であったことが証明された。当然のことで安心した。

ただし、第5回目の接種率を見てほしい。負の相関は認められるが、数字は少し落ちていることがわかる。

直近1週間の感染率とワクチン接種率の関係

 さて、問題はここからである。上の表の3行目を見てほしい。12月22日の直近1週間の感染者数と接種率の関係を見たものだ。第1回目から第4回目接種までには有意な相関がみられない。

 つまり、ワクチン接種率が高い都道府県でも、直近1週間では、ワクチンの効果は見られない! 今のウイルスにはワクチンの効果がない。

 1回目から4回目のワクチンは今のウイルスには全然効果がない。

 問題は5回目のワクチンだ。p=0.013で、r=0.361。何と弱い正の相関関係がある。接種が進んでいる都道府県ほど、直近の感染者数が多いというのだ。とんでもない結果だ

 よく打っている県ほど今のワクチンには感染しやすいのだ。この解釈は難しいが、今流行しているのが、変異した攻撃的なウイルスだということなのだろうか?

 結論としては、

現在流行しているコロナウイルスには、4回目までのワクチンは効かない。

5回目のワクチン接種の進んでいる都道府県では、むしろ今のウイルスの感染者が多い。

<どっか、計算か解釈にまちがいがあるのだろうか?> 2022年12月24日

追加
 12月16日の日経新聞の夕刊に次のような記事があった。「米科学誌セルは、15日までに、米国内で流行するオミクロン派生型「BQ.1」、「XBB」は、既存のコロナワクチンが効きづらく、深刻な脅威となるとしている」。

 そして、12月4日から10日の新規感染のうち、この2つのウイルスが訳7割を占めているとした。日本でもそういうことなのだろうか?