精神科病院から退院する方法

 まず、言っておきます。精神科病院の精神科医の言っていることを信じましょう。入院しましょうなどとめったに言いませんし、そもそも精神科医は控えめに言う場合が多く、精神科医が入院をすすめたら余程のことです。まだ、入院を継続した方がいいと言われたら、多くの場合、その意見に従った方が利益が大きいでしょう。

 でも入院した後、どうしても退院したい場合に早めに退院できそうな方法をお教えします。

難易度別に3つの場合を考えてみましょう。

任意入院の場合

 退院するにはいくつかの方法があります。病状がよくなり、主治医、家族、本人同意の上、円満退院するのが一番ですが、何らかの理由でうまくいかない場合いくつかの方法があります。

A.強行策ですが、任意入院の場合は日中の外出は自由なため、自宅に帰って戻らなければいいのです。ただし、家族や主治医との関係を損なう可能性もありますし、治療を中断することで病状が悪化する可能性があり望ましいとはいえません。入院生活が辛いなら主治医とよく相談しましょう。

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 退院を申し出た場合、指定医がいる場合(B)といない場合(C)があります。

B.まず、指定医がいる場合です。指定医は症状からみて入院の継続が必要だと考えた場合、文書で告知して72時間の退院制限を行います。その際、Aの方法ができないように、外出制限の処遇を受ける場合があります。これも文書で告知されます。幸運にもされない場合、Aの方法をとれる可能性があります。

 さて、72時間たってどうなるかですが、ここで退院できないと判断されると医療保護入院に変更される可能性があります。

 ところが、精神保健福祉法第33条の解説[4]に、任意入院に同意していると医療保護入院にならないという文言があります。これを主張すれば、医療保護入院にならないということになります。

「入院に同意してます」そういう人を医療保護入院にするのは違法ですと言えばいいことになります。任意入院のままなら退院のチャンスはあります。Aの形をとるとか、翌日にまた、退院を主張してもいいでしょう。

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C.指定医のいない土日祝日に、「退院します」と言う方法があります。申し出先は医師でなくともいいことになっています。この場合、当直している非指定医に連絡されます。医師はそのまま退院させるか、なんらかの理由で退院を止めようとする場合でも、非指定医は退院制限できません。できるのは外出制限だけです。

 外出制限は、「外出制限のお知らせ」で告知しなければなりません。でもめったにないことなので、告知文書がみつからない可能性があります。文書で告知しなければ認めないと言ってもいいです。

 また、仮に外出制限されても退院制限はできませんので退院は可能と考えられます。それが、指定医と非指定医の権限の違いだからです。

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医療保護入院の場合

A.医療保護入院でも家族とあるいは一人で外出が許可されることがあります。そのようなとき、無断で家に帰ってしまう。任意入院の場合と同じ強行策です。これは、やはり、家族や主治医との信頼関係を裏切るということになりますし、治療を受けるチャンスを逃してしまいますので、もちろんおすすめしません。

B.まず、任意入院になることです。自分は任意入院に同意していると主張します。そのうえで、上記[4]を持ち出し、入院の同意書にも署名できますと言う。この場合、[4]を信じるなら、任意入院にせざるを得ないということです。任意入院になってしまえば、上述した方法がとれることになります。なお、私自身は、この解説[4]は、精神保健福祉法第33条とも微妙に異なるという点で誤解を招いていると考えています。

C.退院請求する。連絡先は入院の時にもらった「医療保護入院のお知らせ」と院内の公衆電話の近くに掲示してあります。ただし、結果が出るまで1か月前後はかかることは覚悟することが必要です。調査に来る2人の委員は主治医に比べて病状の認識の面で非常に不利です。普通に考えれば当然のことです。

 なぜなら、接してきた時間が主治医の方が圧倒的に長いですし、家族とも接しており、今での事情も熟知しています。主治医は自分の利益のために治療を継続しているわけではありません。善意で責任を伴う入院治療を行っているのです。退院請求をする患者は医師にとって心理的にも時間的にも負担です。しかし、医師の倫理に従って患者の利益を考えると負担は大きいけれども治療は続けた方がよいという結論になっているのです。

 また、病院にいるのが非常に苦しいという場合、それが病状と結びついている場合があります。そこが少し克服できたときに病状が改善しているということもあります。

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措置入院

 措置入院の場合、普通外出はできません。もし、無断外出をした場合、精神保健福祉法第39条によって警察に通報されることが考えられます。ですから、いくら入院が嫌だといっても強引な作戦は通用しません。

 自傷他害のおそれがなくなるまで退院はできません。この自傷他害のおそれがまだあるのかないのかはとても難しいところです。どのくらいの頻度であるのか、程度はどうか、どのくらいの未来に起こりうるのか、詳細な規定がありません。死ぬまでの間に自傷他害を起こす可能性は誰でも相当高いでしょう。ですから、自傷他害の判断に主観が入りこむ可能性はないとはいえません。

 ともかく治療に専念しましょう。医療スタッフと協力して、病状を十分改善させましょう。そのチャンスです。(2025年1月)