Ⅳ.隔離の地域差について
隔離の地域差について調べました。表3に入院数あたりの隔離数を示しました。これは、入院している患者のどれだけが6月30日に隔離をされているかです。少ないところは、岡山、北海道、新潟、宮城、熊本で、0.014から0.017となります。一方、多いのは、和歌山、島根、群馬、岐阜、愛媛と地域はばらばらで、0.054から0.064です。最大4.6倍程度の差異があります。
表3 入院数当たりの隔離数
入院数当たりの隔離数 | ||
入院数当たりの隔離数が | 岡山 | 0.014 |
少ない県 | 北海道 | 0.015 |
新潟 | 0.015 | |
宮城 | 0.016 | |
熊本 | 0.017 | |
入院数当たりの隔離数が | 和歌山 | 0.054 |
多い県 | 島根 | 0.056 |
群馬 | 0.058 | |
岐阜 | 0.060 | |
愛媛 | 0.064 |
しかし、先に申し上げたように、人口当たりの入院数が異なりますので、人口当たりの隔離数を調べました。表4によると、岡山、新潟、宮城はベスト5に入ってくるのですが、1位は神奈川で人口1000人0.021人、埼玉も少なく0.040人です。一方、多いのは、四国、九州地方です。長崎では、人口1000人中0.20人が隔離されています。10倍程度異なります。政令指定都市の岡山市ではさらに人口当たりの隔離率が0.21人と高く、岡山県が0.033と極端に低いのと対照的です。その事情を私は知りません。
表4 人口1000人当たりの隔離数
人口1000人当たりの隔離数 | ||
人口当たりの隔離数が | 神奈川 | 0.021 |
少ない県 | 岡山 | 0.033 |
新潟 | 0.036 | |
宮城 | 0.037 | |
京都 | 0.039 | |
埼玉 | 0.040 | |
人口当たりの隔離数が | 徳島 | 0.14 |
多い県 | 島根 | 0.16 |
愛媛 | 0.18 | |
鹿児島 | 0.19 | |
長崎 | 0.20 |
Ⅴ.身体的拘束の地域差について
同様に、拘束についても、表5、表6で、入院数当たりと、人口1000人当たりでみてみました。岡山、香川が入院数当たりでも人口当たりでも少なくなっています。努力されているようです。入院あたりの拘束数の少なさでは、福岡、熊本と九州勢が入っていますが、人口当たりでみると九州勢は少ない5県にはありません。福井、埼玉、千葉、茨城は入院数当たりの拘束者数は多いのですが、人口当たりの入院者数が多い5県には入ってきません。
人口当たりの拘束数が多いのは、山形、北海道、青森、秋田の北の地域と、第5位に長崎が入っています。埼玉は0.094で、真ん中より少し拘束数が多めですが、報道の結果とは異なり、人口当たりで見れば、特に多くはありません。岡山、香川で少ないのは、地元の努力のほかに、温暖で雨天が少ないという気候の影響もあるかもしれません。寒いところでは拘束率が多くなっています。気候の影響は後に考察します。
人口当たりの隔離数が多かった5県のうち、人口当たりの拘束数が多い5県に入っているのは、長崎だけです。隔離により拘束を代替できる可能性を示しているのかもしれません。しかし、普通に考えるならば、拘束でも隔離でも非人間的なことで間違いはありません。 なお、人口データが平成29年の予測値であるなど、データの種類によって数年のずれがありますので、細かいところは自信がありません。ご容赦下さい。
表5 入院数当たりの拘束数
入院数当たりの拘束数 | ||
入院数当たりの拘束数が | 岡山 | 0.0038 |
少ない県 | 香川 | 0.0051 |
福岡 | 0.0086 | |
京都 | 0.0093 | |
熊本 | 0.0103 | |
入院数当たりの拘束数が | 福井 | 0.055 |
多い県 | 埼玉 | 0.056 |
千葉 | 0.059 | |
茨城 | 0.059 | |
山形 | 0.076 |
表6 人口1000人当たりの拘束数
人口1000人当たりの拘束数 | ||
人口1000人当たりの拘束数が | 岡山 | 0.00892 |
少ない県 | 香川 | 0.0155 |
京都 | 0.0177 | |
和歌山 | 0.0236 | |
愛知 | 0.0287 | |
人口1000人当たりの拘束数が | 長崎 | 0.139 |
多い県 | 秋田 | 0.147 |
青森 | 0.153 | |
北海道 | 0.167 | |
山形 | 0.214 |
しかし、重要なのは、人口当たりの拘束数であると思いますので、これがどのような因子と関係しているのか次に調べていこうと思います。
まとめ
・人口当たりの隔離数が少ないのは、神奈川、岡山、新潟、宮城、京都である。埼玉も少ない。
・隔離の多いのは、長崎、鹿児島、愛媛、島根、徳島である。岡山市も多い。
・人口当たりの拘束数が少ないのは、岡山、香川、京都、和歌山、愛知である。
・拘束の多いのは、山形、北海道、青森、秋田、長崎である。
・拘束の多さには気候も影響しているのではないか。
・隔離の多い地域と拘束が多い地域は異なるが、隔離で拘束が補えているのか、病気の性質が違うのか。
・あるいは、隔離と拘束では、ターゲットとなる問題行動の種類が異なるのか。